

2月末日以来の歌舞伎座。
元々、仁左衛門さんが出演される月しか行かない人なので、年間としてそんなに多く訪れていたわけではないけれど、でも7ヶ月も行かなかったことは近年ほぼない。
行かない間に、チケット戦線のくぐりぬけ方法を忘れていたらしく(笑)
ちょっと出遅れて手配することになってしまった結果、なんと初日に行くことに。
初日に行くのなら「本日初日」の垂れ幕が下がった歌舞伎座をじっくり見たい・・・
ということで、結構早めに到着。
・・・いかん。写真撮るために歌舞伎座の周辺を歩いているだけで、もう泣きそう。
興奮して体温が上がったら入れないから、気を落ち着けるためにお稲荷さんにお参りをし(ついでに楽座で御朱印も頂いた)、今月の興行の無事を願う。

いざ、中へ。

自分が行けなかった期間、歌舞伎座がどう変わっていたかは何となく漏れ聞いていた。
チケットは自分でもぎって箱の中へ。その後、非接触型の機械で体温測定されてから入場。
売店の販売全てなし。
後援会のロビー受付なし。(特に初日は、奥様方が勢揃いして華やかだった)
筋書きの販売無し。代わりに無料の演目について書かれた冊子を自分で取る。
一演目しかやらなくて休憩がないから、入ったらいきなりすごい勢いで緞帳紹介がされている(^^ゞ←いつもは休憩中
そして、花道脇と桟敷席の販売はなく、基本座席は一つおき ※歌舞伎座は当面一つおきとすることが表明されています
演目に関わるところでいうと、花道での発声は禁止で、
演目ごとに役者もスタッフも全員入れ替わって消毒もするから、演目の時間にも限りあり。
今回、1時間15分で、今月の4演目の中では最長だったから、多分最高がそれ位なのではなかろうか?
見知った劇場なのに、何だか初めて行く劇場みたいになっていて緊張。
でも、揚幕や座席や横(結構端席だった)の提灯の見知った鳳凰の紋を見て、あぁ歌舞伎座に帰ってきたんだなと実感・・・
梶原平三誉石切

演目名が発表された時「また?」と思ったのだけど、仁左衛門さんが演じるのはなんと16年ぶりなのだそう。
あ、そっか。「また?」と思ったのは、近年別の役者さんで観る機会が多かったからか(^^ゞ
事前のインタビュー記事で、体力的なことを言っていたから、多分今を逃せば東京で仁左衛門さんの石切が観られることはないのだろうと推測。
何となくだけど、ご本人的にはやり治めたつもりでいたのかもしれないけれど、今この時期のために選んでくれたのではないかな?と思っています。
そして、事前のインタビューで泣く泣く10分くらいカットしたという話も。
やたらめったらカット出来なさそうな演目だけど、どこをカットしたのかなぁ?と思いつつの開演。
定式幕が開くと、いきなり浅葱幕が登場。
おっと、最初からイレギュラーなのね、と思った瞬間に幕が落ちる。
・・・・え?
初日だったので、大半のお客さんは私と同じような反応だったと思う。
一瞬の間が空いた後、割れんばかりの大きな拍手(そうそう、大向こうも禁止だ)
そこには、まばゆいばかりの輝きを放った仁左衛門さん(梶原景時)がいた。
振り落しで板付きで登場だなんて、そんなの反則だよ(;_;)
泣く演目じゃないと思っていたのに、いきなり最初から視界が涙でかすんだ・・・
大きな大きな拍手に包まれて、平三の出の台詞の最初の方は聞こえなかった。
無粋な説明をちょっと入れます。
本来、「梶原平三誉石切」は鶴岡八幡宮へ大庭三郎景親と俣野五郎の兄弟が参詣にやってくるところから始まります。
(確か花道を通っての出だったはず)
そこへ偶然、梶原平三も参詣にやって来て(これも花道から登場)、せっかくだから(仲悪いけど(笑))皆で一献という流れになっています。
時間短縮のため、このくだりはばっさりカットしたのでしょう。
浅葱幕の後ろには、何があるかは見えません。
浅葱幕は、「振り落し」と言って、チョンと柝が打たれてパラっと幕が落ちると、一気に舞台上が見える仕掛けになっています。
目の前にいきなり豪華な場面が現われるので、視覚的効果が抜群です。
チョンパと似ていますが、基本的に浅葱幕の時には照明は落ちません。
私は、浅葱幕の後ろにいるのは大庭三郎景親と俣野五郎だけかと思っていたので(平三だけは花道の出があると思っていた)
不意に板付き(幕が上がった時点で役者さんが既にいること)で現れた仁左衛門さんに、文字通り目を奪われてしまったのでした。
※私には平三しか目に入りませんでしたが(^^ゞ、大庭三郎景親と俣野五郎、そしてそれぞれの家来たちが全員まとめて振り落としで登場しています
しかし、あの時の仁左衛門さんの華やかな圧はすごかった。
元々、出の時には舞台全体がぱっと華やいで観客がわっと沸く役者さんではあるけれど、
武士としての役の気品も、舞台に再び立てる喜びも(仁左衛門さん自身も2月の歌舞伎座以来の舞台だった)、短縮版に有無を言わせぬ圧(笑)も
全てが客席に降り注がれた感じでした。
しかし、落ち着いてくると、なんだかちょっと違和感。
家来の数、こんな少なかったっけな?なんだか舞台がすかすか(^^ゞ
どうもソーシャルディスタンスの都合上、数人減っていた模様。
豪華=密だもんねぇ。助六なんて、当分出来ないな・・・とか考えつつも、基本は目は仁左衛門さん(笑)
梶原平三誉石切は、簡単に言うと平三が刀の目利きをする話です。
老人が景親に刀を売ろうとやってきて、すごくいい値をふっかけてきたから
だったら刀に詳しい平三に目利きをしてよ~と頼み
平三は素晴らしい!っていうのだけど、景親の弟の五郎が言葉だけじゃ信用ならんと言い出し
んじゃ、ってことで罪人2人まとめての試し切りをするのだけど、
1人しか切れずだめじゃん、ってことでこの話はなかったことにと兄弟が去る。
娘の婿のためにお金が欲しかった老人は、その刀で自害しようとするが
平三が、いや実は1人しか切らなかったのはわざとで
この刀が名刀であることを今から証明するから!
ってことで、神社の手水鉢を真っ二つにして名刀であること
さらには、老人が源氏方であることを見抜き、自分も平氏に組しているけれど心は源氏にあると言い残して去っていく
そんなお話。
見どころは、平三が手水鉢を真っ二つに切るところと、実は自分も源氏方であると心の内を語るところです。
老人(青貝師六郎太夫役)の中村歌六さんは、近年よく観ていた播磨屋(中村吉右衛門さん)でも同じ役をやっていたので、超安定。
老人役はこの方の右に出るものなし、というくらい老け役の大家(?)だけど、実年齢は仁左衛門さんより年下だよね(^^ゞ
試し切りは罪人が2人必要なのだけど、1人しかいなくて、自分を残りの1人にしてほしいと申し出るのだけど
結局切られるのは罪人1人の方だけだから、生き残ったと分かった時に娘と喜ぶ姿が可愛い(#^^#)
そうそう、罪人役が切られる前にお酒の名前を(黄桜とか剣菱とか)羅列しながら嘆く有名な台詞があるのだけど、
「百年の孤独」が入ったのは初めて聞いたなぁ。あれは役者さんによって自由度があるのか?
六郎太夫の娘梢は片岡孝太郎さん。
う~ん・・・この役はニンなのか??
なんか、父親に刀を売ってもらわなくても、自分でちゃっちゃとお金を用立て出来そうな娘に見えてしまった(^^ゞ
って、自分が感じた違和感を何と表現するのかもやもやしていたら、ある方がTwitterで「かしましい」と感想を書かれていて、それだ!と←語彙力
孝太郎さん自身は演技が上手いし好きですが、この役としては個人的にはちょっと微妙でした(すみません)
大庭三郎景親役の坂東彌十郎さんと、俣野五郎役の市川男女蔵さんは、
論評に「軽い」と書かれているのも見たけれど、敵役なので憎々しい感じが良かったなと思いました。
特に男女蔵さんは、やっぱり舞台復帰作品だったと思うので、気合の入り方がかなり違ったと思います。
そして、梶原平三景時役の片岡仁左衛門さん。
私が近年観ていたのは、ほとんど中村吉右衛門さんの同役で播磨屋型。
仁左衛門さんは、橘屋(羽左衛門)型でやるので、播磨屋型と違って「派手です」と事前インタビューで言っていたのは知っていました。
うん、確かに派手だ。
二つ胴の試し切りのところでは、梅の花が上からひらひら舞っていたし(播磨屋型は舞わない)
↑梅の花も落ちてきてしまうほど霊力がある刀という表現らしいけれど、私は仁左衛門さんを輝かせる小道具にしか見えてなかった(^^ゞ(笑)
何よりも見せ場の手水鉢を切るところ。
播磨屋型は、客席に背を向けて真っ二つに切るのだけど
橘屋型は、客席の正面を向いて切る。
これも事前に情報を得ていたので、これを正面で観るために、上手寄りの席にしたのだ←手水鉢は上手にある
二つ胴の時もだけど、刀を構える姿が威厳があってカッコ良いのよねぇ(#^^#)これぞ武士!という感じ。
そうしたら、手水鉢が真っ二つに割れた瞬間にぴょんと前に躍り出て見得を切る。そしてバっと懐紙を投げ捨てる
ひぇぇ~派手!!(笑)だけど、カッコイイことこの上なき。この瞬間のためだけに捧げた席のようなものだ。満足満足!!
そういえば、私が懐紙を「刀を見る時に使うやつ」と思い込んでいたのは、この演目のせいだったことも思い出した(爆)
吉右衛門さんの平三は、重々しくて重鎮な武士という感じ。
仁左衛門さんも、もちろん品格があって武士という感じはするのだけど、
刀の目利きをする時に、刀を愛おし気に眺めまわしたり、
二つ胴で実際に切り味を確かめた時に、生きていることがわかって喜ぶ六郎太夫親子の傍らで、
切れ味が自分が思った通りという感じにめちゃくちゃ嬉しそうに刀を見ていたし、
刀オタクなんだな、という感じ(笑)←だから語彙力(^^ゞ
あ、でも吉右衛門さんは目利きの時に刀を取り出して、自分が持つところに組みひもみたいなのをぐるぐる巻いて柄の部分を作っていたけれど
仁左衛門さんは、袋から柄部分だけ残してバっと出して目利きしていたから、雑だな(^^ゞと思いました(笑)
これは時間短縮なのか、型が違うからなのかどっちなのか・・・
試し切りを最初は俣野五郎がやろうとして、「目利きしているのは自分」と押しとどめるところの迫力と目力もすごかった。
結局切れ味が悪いと大庭三郎景親たちを騙して、自分が刀を横取りしたわけだし、
そういうことを考えそうな刀LOVEの人なんだな、と何だか納得。
でも、オタクだけど、自分の心のうちを明かす見せ場2は、やっぱり素晴らしい。
捌き役と言われる所以はこの辺りにあるのだけど、刀を見た時に全てを悟って、全てのみこんで源氏方を助けようとする心意気はやっぱり武士。
そういえば、今回は奮発して前方席(なんと端ではあるけれどとちり席だ)にしたので、初めて刀に刻まれている銘(この銘で六郎太夫親子が源氏方だと気付く)も肉眼で見えた(^^)v
オタクから武士に戻って、決然と前を向いて花道を引っ込んでいく平三の何と美しいこと。
武士という役柄上、それが正解だったのかはわからないけれど、
全般的に仁左衛門さんは、役というよりも自身の「再び舞台に立てる喜び」を隠そうとせずに舞台に臨んでいたように見えた。
だから、刀を見つめる目も嬉しそうだったのかもしれないし、
最後の花道の引っ込みも楽しそうに見えたのかもしれない。
でも、自分を含めて観客は、仁左衛門さんが舞台に戻ってくるのをずっと待っていたんだな、と感じられた初日でした。
正直な感想を言うと、やはり久しぶりの舞台ということで、いつもの仁左衛門さんよりも声の張りがないように感じられてちょっと心配でもあり。
それでも、自分の大好きな役者さんが、「舞台に立てる」喜びを全身で表現している姿を目の当たりにするのは、何を観るよりも光輝いて尊く・・・
夢のような時間が終わってしまうのが寂しくて、平三が花道を去っていくのを見て涙。
終わってしまうのが寂しいと思った観劇は、今まで一度もなかった。
今この時期に劇場にいるかいないかは、人それぞれ事情が違っていて、どれだけ好きであっても観劇を果たせていない人はたくさんいるのだと思う。
配信はとてもありがたいシステムだけれど、やっている方も観ている方も、舞台と同じと思ってはいないのだろうとも思う。
だから私は、今この時期に「生の舞台がやっぱり一番」という言葉は安易に使いたくないと思っていたけれど
でも、やっぱりあの仁左衛門さんの姿を見たら、劇場で観劇できるということがどんなに素晴らしいことなのかを実感させられたような気がします。
自分が忘れていた大切なことを思い出させてくれた仁左衛門さんの渾身の演技に感謝します。
10月10日記
※このブログ的には通常営業な感じですが(^^ゞ、色々と事情があるため、レポは観劇日の1か月以上後に掲載することにしました
10月25日追記
千秋楽も近い日に、2回目を観劇することが叶いました。
心配だった仁左衛門さんのお声の張りも、初日よりもずっとよくなっていてほっとしました。
演技に関しては初日から出来上がっている役者さんなので、大きく変わることは毎回ないのですが、
二つ胴を提案する辺りから、刀を自分がもらおうと策略していたのだろうな、という道筋がよりわかりやすくなった演技をされているように見えました。
え?横取りってずるくない?と思いましたが(笑)、
花道から去るときに、刀を手に入れて満足そうな表情から、ふと顔が凛々しく引き締まり。
きっとこの人は、手に入れた刀で平家を倒す戦いに臨むのだろうなぁと武士の品格が垣間見えた素晴らしい引っ込みでした。
所作が美しいので、ひとこまひとこまが錦絵のように綺麗で、本当に幸せなひとときでした。
大向こうがないのが本当に残念ですけれど、心の中では何度も「松嶋屋!!」と叫んだ観劇でした。
(というか、ほぼほぼ仁左衛門さんしか観ていなかった(^^ゞ)
色々な事情から、2回目はもう観られないだろうと諦めていたので、こうやって2回目を無事に観終終えることができて、本当に良かったです。

歌舞伎はまだ一度も舞台を見たことがないです…(>_<)
今度東京に行った時、歌舞伎座で見てみたいです(*^^)v
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今は、直前まで前方席が買えたりして天国ですが、あらゆる意味で、歌舞伎座よりも国立劇場の方が、歌舞伎を楽しめるかもしれません。 南座の顔見世もいいかもですが(高いけれど…)
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劇場での検温は、体温上がりそうで(?)緊張しますよね。
豪華=密・・・なるほど、そうかもしれません・・
色々とイレギュラーなことがあって戸惑うこともありますが、久しぶりに歌舞伎を鑑賞できて良かったですね!
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私は毎日の体温が義務なので、お休みの日でも検温しているのですが、
お店とか劇場に設置してある非接触型の体温測定器は、大体1度(0.1度ではなく)低いことがほとんどで、正確性があるのかな・・・と、ちょっと思っています(^^ゞ
なので、あれで「発熱」と言われたら、相当興奮していることになると思います(笑)
オンデマンドで1週間限定配信された映像を見たら、並んでいるけれど対面でしゃべっていなかったり、対面でも若干向きを変えてしゃべっていたり、
観客も戸惑うことが多いですが、役者さんはもっと大変だったのだろうなと思いました。
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